「新平和」に出演予定であった俳優の降板について

公演を行うにあたり、1点皆様にお知らせしておかねばならないことがございます。

烏丸ストロークロック×五色劇場「新平和」の公演は、本来出演予定でした俳優を1名欠いての上演となりました。しかし、今回の降板はなんら俳優個人の事情によるものではありません。


この作品の創作にあたり、演出の柳沼昭徳から「ハラスメントのない、快適な創造環境を作るための確認事項」が、参加者全員とのオリエンテーションで掲げられ厳重に注意を払う旨が共有されました。しかし、本番を間近に控えた折、柳沼が自身が掲げたコンプライアンスに違反し、その結果、1人の俳優が抗議の意として降板を表明しました。私は彼の主張は正統であると判断し「申し訳ないが公演のため、みんなのためにここは一旦飲み込んで欲しい」という要求を行わずこれを受諾しました。これに対し他の俳優からも、彼の意志を全面的に支持すること、自らが出演することでこの件を容認する立場に立つことはできない、共に創作してきた仲間を欠いての上演に意味はあるのかという抗議を受けました。


具体的にどういった抗議や違反が行われたかということをここに明記しない理由は、詳(つまびらか)にすることによって、第三者による過度の詮索による俳優のプライバシー侵害や彼の今後の活動に悪い影響を及ぼす危険性を最大限阻止したいという理由からであることを、誠に勝手な言い分ではございますがご理解賜りたいと存じます。


パンフレットにも書かせて頂きましたが、この作品は柳沼個人が執筆し俳優はその渡された台本を演じるという類のものではなく、出演者自身が長い時間をかけて創作したエチュードが脚本の重要な礎となっている作品です。加えて原爆・戦争を取り上げ、演劇の力を以てして未来に繋いでいく作品に参画し演じる責任を簡単に放棄できないことに降板する俳優も出演する俳優も非常に苦しみました。私は彼らと長い時間話し合いを行いました。


しかし、今日までこの「新平和」という作品のために努力を重ねてきた俳優たち自身が話し合いを行い、たとえ公演ができなくなっても承服できないことは承服してはならないという強い意志で団結し、その上で柳沼もこのコミュニティの一員なのだから、過ちを認めた上で関係修復に努めてもらい、自分たちと最後まで一緒に創って欲しいという申し出を受けました。俳優は演出やプロデューサーに従うものという慣例に流されない、新しいコミュニティの在り方を自ら創った彼らへのけじめとして、ならびに降板した俳優からも「新平和を上演して欲しい」という意を受けこの度、この事例をあえて公表し公演を行う決断に至りました。


このような事態を招いてしまった責任は、私の管理監督不行届にございます。作品に御助力 応援くださった皆様へ、大変ご迷惑をおかけしてしまいましたことを心よりお詫び申し上 げます。本当に申し訳ありませんでした。


五色劇場プロデューサー 岩﨑きえ